起訴休職制度が労務トラブルに発展したことがあります(全日本空輸事件 東京地裁 平11.2.15 労判760.46)。
このブログでは労使トラブルを防止・解決し、
会社を守るための就業規則はいかにあるべきかきを察していきたいと思います。
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起訴休職制度が労務トラブルに発展したことがあります(全日本空輸事件 東京地裁 平11.2.15 労判760.46)。
Y社の客室乗務員Aと男女関係にあった同社の機長資格操縦士Xは、出張時にAを同行させるなどしていました。あるとき、ホテルの寿司店でAが「話がしたいので部屋に来てくれ」と言うので部屋に行き、午後10時頃Xが帰ろうとしたところ、Aは帰らないでくれと言い、揉み合いとなってAは怪我をしてしまいました。
Xは傷害を公訴事実として起訴され、略式命令により罰金10万円に処せられましたが、無罪を主張して正式裁判を請求しました。
Y社は、起訴翌日から業務停止にしていたXを就業規則に定められた休職事由のひとつである「業務以外の事由で刑事上の訴追を受けたとき」及び「休職者に対する賃金に関してはその都度決定する」の2つの条文を適用し、無給の休職処分にしました。
本刑事事件の無罪判決後、復職したXは休職処分の無効確認と、休職期間中の賃金等の支払を求めて提訴しました。
判決の要旨は以下の通りです。
請求の一部認容。「(就業規則に定められた)起訴休職制度の趣旨は、刑事事件で起訴された従業員をそのまま就業させると、職務内容又は公訴事実の内容によっては職場秩序が乱れたり、企業の社会的信用が害され、また、当該従業員の労務の継続的な給付や企業活動の円滑な遂行に支障が生ずることを避けることにある。」
「したがって、就業規則上の起訴休職制度を適用するに際しては、職務の性質、公訴事実の内容、身柄拘束の有無など諸般の事情に照らし、起訴された従業員が引き続き就労することにより、Y社の対外的信用が失墜し、又は職場秩序の維持に障害が生ずるおそれがあるか、あるいは当該従業員の労務の継続的給付や企業活動の円滑な遂行に障害が生ずるおそれがある場合でなければならず、また、休職によって被る従業員の不利益の程度が、起訴の対象となった事実が確定的に認められた場合に行われる可能性のある懲戒処分の内容と比較して明らかに均衡を欠く場合ではないことを要するというべきである。」
「本件についてみれば、休職処分時Xは身柄拘束を受けておらず、公判期日への出頭も有給休暇の取得により十分可能であったこと、・・・、本件事件は、業務外の事由により生じたものでマスコミからも報道されておらず、客室乗務員と機長との信頼関係を損なわしめるものではない。」
「約18ヵ月にわたる無給を伴った本件休職処分は、仮にXが有罪になった場合に課せられるおそれがある懲戒処分としての解雇・減給(賃金締切期間分の10分の1)・出勤停止(1週間以内)・降転職(賃金は全額支給)と比べても著しく均衡を欠く。」
「そもそも、本件刑事事件は、Xが正式裁判を請求しなければ、略式命令で終了した事案であり、休職処分を課す余地は無かった。」
「以上の事実を総合すれば、本件休職処分は、Xが引き続き就労することにより、Y社の対外的信用の失墜、職場秩序維持に対する障害及び労務の継続的な給付についての障害を生ずるおれがないにも係わらず、なされたものとして、無効である。」
多くの会社の就業規則で、起訴・病気・事故・出向など様々な事由による休職制度が定められています。
上記労使トラブルは、男女関係のもつれから刑事事件に発展、業務外の事由による休職処分が無効とされた事案です。
今後は、男女関係のみならず、セクハラやパワハラによる起訴休職処分を争う事件が起こる可能性があります。
上記事案からもわかることですが、起訴休職処分を課すには就業規則に定められているだけでは、不十分であり、その運用に当たっては十分な注意が必要です。
すなわち、
1.職務の性質、公訴事実の内容、身柄拘束の有無など諸般の事情に照らし、起訴された従業員が引き続き就労することにより、会社の対外的信用が失墜し、又は職場秩序の維持に障害が生ずるおそれがある。
2.当該従業員の労務の継続的給付や企業活動の円滑な遂行に障害が生ずるおそれがある。
3.休職によって被る従業員の不利益の程度が、起訴の対象となった事実が確定的に認められた場合に行われる可能性のある懲戒処分の内容と比較して明らかに均衡を欠く場合ではないことを要する。
等、総合的に判断した上で起訴休職を命じる必要があります。
就業規則規定例
(起訴休職)
第○○条
従業員が、業務以外の事由で刑事上の訴追を受けたときには、以下の各号の要素を総合的に判断した上で休職を命ずる。
(1) 職務の性質、公訴事実の内容、身柄拘束の有無など諸般の事情に照らし、起訴された従業員が引き続き就労することにより、会社の対外的信用が失墜し、又は職場秩序の維持に障害が生ずるおそれがあること。
(2) 労務の継続的給付や企業活動の円滑な遂行に障害が生ずるおそれがあること。
(3) 休職によって被る従業員の不利益の程度が、起訴の対象となった事実が確定的に認められた場合に行われる可能性のある懲戒処分の内容と比較して明らかに均衡を欠かないこと。
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